(博士論文の書き方)

社会人大学院生にとっての博士論文の意味といかにして執筆すべきかについて、永年サラリーマンと社会人大学院生だった私の経験に基づいて書いてみます。スマホで読む人も多いブログなので、必要な情報に速くアクセスできるように書きます。

<博士論文を書く目的とメリット>

1.各分野の専門家として認知される。講演・執筆の機会が増える。

2.自己の研究の集大成となり、さらに高い目標を設定できる。

3.大学のポジション(教員職)を得やすくなる。

4.英文敬称が、Mr. Ms. などから、Dr. となる。

<基本的な方法論>

1.大学院の博士課程に入学

 日本には博士課程に入学せずに、論文を大学に提出して博士号(論文博士)を取得する方法もありますが、サラリーマンの場合は効率が悪いでしょう。学費を払って指導教授の指導を受ける方が効率が良いと思います。

2.論文テーマ

 入学願書にはテーマが書かれているが、実は入学後にテーマを探す人がいます。職業人として仕事上の問題意識から研究テーマを決めないと完成することはかなり難しいです。修士論文は指導教授の研究領域に近いテーマで書くことができても、修士論文の延長線上のテーマでは博士論文の完成は厳しいです。さらに言うと、職業上の問題意識も専門性が必要です。例を挙げて説明します。私は銀行員として、銀行の国際部、海外店、国内店で勤務しました。その経験から、取引先との交渉などの営業活動を多く行いました。職業人としての問題意識としては、①取引先を増やす方法、②将来性のある取引先を見つける方法などがあります。しかし、このような問題意識から博士論文のテーマはなかなか見つからないと思います。銀行には専門性の高い部署があります。例えば調査部門、審査部門やディーリング部門などです。審査部門などで働いた人が、例えば企業分析で独自の手法・方法論で倒産企業リスク分析を理論化できれば可能性はあるはずです。しかし、その理論が正しいと証明する必要があります。さらに銀行員として利用したデータを論文に利用するためには、銀行の了解が必要なはずですし、さらに取引先の了解を得ることは不可能となります。つまり職業人として持っている問題意識から解決策を見つけて、公開利用できるデータで証明するのは意外と難しいということとなります。

3.途中で断念することも念のため想定すべき

 入学していきなり博士論文の本体部分の執筆を始めることはお薦めできません。むしろ周辺部分の情報を分析するなどして(下記★)、研究ノート・小論文として院生用雑誌などに発表したり、学会報告することをお薦めします。そのことにより博士論文の論点整理ができる上に、途中で断念しても、その研究ノート・小論文が自身の研究業績として残ります。いきなり博士論文という大きな山を築くのではなく、小さな丘を築いて、大きな山に育てるという考え方をすると、撤退する場合にも複数の論文という業績を残すことができます。社会人にとって博士論文の執筆は、指導教授のアドバイスに従って、登山するようなもので、そのアドバイスが不適切であれば、登頂することはできません。そのような場合も、部分的な研究業績を残しておけば、数年後に、他の大学院で、登り口を変えて、再度チャレンジし易くなります。

★①周辺の先行研究の分析

★②日本に先行研究がない場合に、欧米の(英文)論文の研究

★③その領域の議論が裁判となっている場合には、裁判資料の分析

 6年、7年と頑張る人もいます。10年頑張った人も見ています。私は社会人大学院生とくに博士課程の院生には、諦める勇気が大事だと思っています。なぜならば指導教授を含めて、回りの人は決して「断念」するようにアドバイスしません。

4.完成までの道のり 

 私の場合、当初、多摩大学大学院博士課程と横浜国大大学院博士課程に入学を許可されましたが、テーマが見つけられない、あるいは横浜は遠すぎて論文指導を受けにくいなどで、博士課程に入学することを断念しました。そして中央大学大学院博士課程法学研究科に入学しました。しかし銀行の国際部に勤務していても、博士論文を書くための情報を集めることはできませんでした。在籍中に指導教授との共著論文を含めると2本の論文を書きました。数年在籍しましたが、私にとって、国際私法の博士論文の執筆には、突破できない厚い壁があったように思います。博士論文の執筆は、社会人の場合には、職業人としての問題意識を勤務を通じて醸成し、データや資料を十分と入手してから、博士課程に入学することが望ましいと思います。またその領域の修士課程を修了しておくことが却って、早道です。具体的な書き方は、人により、テーマにより、指導教授により様々です。私の場合については、別メニュー「私の自己啓発履歴」の18を参照してください。

“(博士論文の書き方)” への6件の返信

  1. Hello Nobu-san! I did not realize that giving up could be an option for you to succeed in crafting a dissertation. Aside from that notion, thank you for the other pieces of advice you have mentioned in your blog. 🙂

  2. Thank you for your sincere and meaningful comment. My real intention is to get a chance of revenge by giving up.

  3. He is very inspirational. As a young worker, I strive to become like him, who develops and grows as time passes. His wisdom is beyond amazing. Nobu-san, you are so great! I’m happy to meet you.

  4. It’s very interesting and informative for me who is pursuing my studies , good job and thanks for sharing such a good blog.

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